LAを拠点に活動するJimmy Tamborelloによるエレクトロニカ・ユニット。1994年、ブライアン・イーノとハードコアを融合したようなサウンドで、メディアから“イーノコア”と称されたStrictly Ballroomを結成する。バンドではベーシストだったが、同年、Dntelとしても活動開始。Strictly Ballroom は97年にアルバム『Hide Here Forever』をリリースするが、そのすぐ後、ギター/ヴォーカルのChrist GunstがBeachwood Sparksに、JimmyがFigurineに参加することになり、解散。Dntelとして、95年から97年にかけて制作されたトラックは、99年にリリースされた初期音源集『Early Works For Me If It Works For You』で陽の目を見る。翌年には、94年に制作されたEP「Something Always Goes Wrong」がリリースされた。そして、2001年に、ようやく1stフル・アルバム『Life Is Full Of Possibilities』が、地元LAのPlug Research Recordsよりリリースされる。盟友Christ GunstやPaul Larsen(元Strictly Ballroom)をはじめ、Death Cab For CutieのBen GibbardやThat DogのRachel Haden、Slint/For CarnationのBrian McMahan、さらにLAの日系ハーフのSSWでPrefuse 73とも交流のあるMia Doi Toddらが参加したこのアルバムは、エレクトロニカ・ポップの隠れた名盤として、高い評価を得る。そんな中、この1stアルバムでの共演を発展させるような形で実現した、Death Cab For CutieのBenとのユニットThe Postal Serviceの1stアルバム『Give Up』がSub Popよりリリースされる。まさにエレクトロニカ meets インディー・ロックと言ってよいこの傑作は、初めこそゆるやかなスタートだったものの、徐々に話題を呼び、気が付けばSub PopにとってNirvanaの『Bleach』以来となるゴールド・ディスク(50万枚)を獲得するほどの大ヒットを記録する。その後、Death Cab For Cutieがメジャーと契約し、ビルボードで初登場4位となるという現象も、このThe Postal Serviceのブレイクによるところが大きいと言っても過言ではない。あまりの人気ぶりに、アメリカの郵便公社が、“紛らわしい”として、バンド名の使用停止を求めて訴えを起こしたのは有名な話(現在は、プロモーションに協力するということで和解)。2006年には、Jimmyのもう1つの“テクノ”・ユニットJames Figurine名義でアルバム『Mistake Mistake Mistake Mistake』(Kings Of ConvenienceのErlend OyeやRilo KileyのJenny Lewisなど参加)をPlug Researchよりリリースするなど精力的に活動を続ける。そして、2007年、Dntelとしては実に6年ぶりとなる本作『DUMB LUCK』が遂に完成。1曲目のタイトル・チューンは自分で歌っているが、その他のトラックは、前作に続いて参加のChris Gunst(現Mystic Chords Of Memory)、Mia Doi Toddをはじめ、The Postal Serviceも含めJimmy関連作品に3連続参加となるJenny Lewis、Bright EyesのConor Oberst、James Figurineにも参加し、間もなくSub Pop傘下の新レーベルhardly artよりアルバムをリリースするArthur & YuのGrant OlsenとSonya Westcott、Morr Musicを代表するドイツのエレクトロニカ・ユニットLali PunaのValerie TrebeljahrとMrkus Acher、Ninja TuneやWarp傘下のLexからリリースするミネアポリスのバンドFogのAndrew Broder、そしてWarpに所属するブルックリンのバンドGrizzly BearのEdward Drosteなど、超豪華なメンバーが華を添えている。さらに、元Strictly Ballroomで、現Moving UnitsのChris Hatchwellもドラマーとして参加。The Postal Serviceに続いてSub Popからリリースとなる本作は、単なる企画もののコラボ・アルバムなどではない。コラボレーションというもの自体に、アーティスティックな特性を見い出すことのできるJimmy Tamborelloというアーティストの、その10年以上に及ぶキャリアの集大成というべき、堂々たる歴史的傑作。