サン・フランシスコ近郊のサン・マテオ出身のシンガー・ソングライター、マーク・ビアンキによる1 人ユニット。
元々、Indian SummerやCalmといったハードコア・バンドで活動していたが、1996年よりハー・スペース・ホリデイとして1 人で創作活動を開始。最初期は、箱庭的スペーシー・ポップであったが、2001 年リリースの4th アルバム『MANIC EXPRESSIVE』(アートワークはRadioheadの『Kid A』を手がけたShynola)、『THE YOUNGMACHINES』(2003 年)、『THE PAST PRESENTS THE FUTURE』(2005 年)のオーケストラル・ポップな「エレクトロニカ3 部作」で決定的な評価を得る。その後、がらっと方向性をかえ、オーガニックで力強い歌が詰まったxoxo, panda をスタートさせる。
これまでに、Bright Eyes、The Go Team、The Faint、Pinback、Bob Mould、Daedelusらとツアーし、R.E.M.、Elastica、Kool Keith、Xiu Xiu、Boom Bipらのリミックスを手がけ、Matmos、Dntel、Stereolab、Super FurryAnimalsらにリミックスされている。また、最近では、Hanni El Khatibのデビュー・アルバムを共同プロデュースしている(Hanni は『THE YOUNG MACHINES』と『THE PAST PRESENTS THE FUTURE』のアートワークを手がけている)。
日本でも、2005年のサマー・ソニック出演、盟友The American Analog Setとのカップリング・ツアー、高橋幸宏のソロ・アルバム『Blue Moon Blue』およびツアーへの参加、Joseph NothingとPianaとのコラボ・ユニットThe Heartbreak Moment、xoxo, pandaとして4 bonjour’s partiesをバックに従えての全国ツアー、さらにサッポロビールYEBISU THE HOPのCMに、コーネリアスや曽我部恵一、クラムボン、高田蓮、つじあやのらと並んで、外国人として唯一人出演するなど、すっかりお馴染みの存在となっている。また、台湾でも、国内最大級のロック・フェスティヴァルFormoz Festivalの、休止前最終公演の大トリを務めるなど、絶大な人気を誇る。
そんな彼だが、2007 年の『xoxo, panda and the new kid revival』(日本以外では、HER SPACE HOLIDAY 名義で、このタイトルでリリースされている)以後、いつくかのCM と、2010 年4 月に突然決まった代官山UNIT と埼玉のcafe couwa でのライヴ以外、音沙汰がなかった。彼は再びオースティンに居を移し、静かに、ゆっくりと、何年もかけて、HER SPACE HOLIDAY を終焉させるべく、最後のアルバム『HER SPACE HOLIDAY』の制作にとりかかっていた。
これまでの1人きりでの制作スタイルを捨て、プロデューサーであるStephen Ceresiaとともに彼のスタジオであるSunday house studio に入り、これまでになくたくさんのゲストを迎える形でレコーディングは行われた。IndianSummerのドラマーだったEyad Kailehをはじめ、日本や台湾、オーストラリアでのバック・バンドを務めてきた4 bonjour’s parties、2010年の代官山UNITで共演したCaroline Lufkin(Caroline/Mice Parade)、Via TaniaのTania Bowers、City LightのNick AndreとMatthew Shaw、Ola PodridaのDave Wingo…等々、そのリストは10 人以上になる。そうやって作られた本作は、ドリーミー・ポップ、エレクトロニカ、フォーク、サイファイ、ヒップホップ、ローファイ…これまで彼が経てきた音楽表現方法のどれかに偏ることなく、全てを包含して総括した、まさに集大成と呼ぶに相応しい芳醇な音楽性を宿している。また、これまでどんな音楽性を纏おうとも、決して変わらなかった、彼の優しい人柄がそのまま伝わるような温かいメロディーと唄心は今作でももちろん健在。まさに、マークが、Her Space Holiday として、出せるものをすべて出しきった、渾身の一作。